焙煎の指標を持つ

焙煎

まず焙煎の第一歩として始めることは

「ログを取り、自分の焙煎機のスタンダードを持つこと」
を僕は提案します。

沢山の種類の焙煎機や設置環境によってロギングされるプロファイルの指標はそれぞれです。
ではどうやって沢山勉強した焙煎の知識で自分の珈琲を美味しくすればいいのでしょうか?

それは自分のスタンダードを持ち、【相対的に】反映させていくしかないです。

その為にはまず、
カロリーとダンパーの固定化をした状態でハゼまで進行させ、1ハゼからは火力を絞り、ハゼ後全体時間の20~25%時間をかけた後排出して美味しいミディアムハイローストが焼けるポイントを確認してください。

そんなこと言っても本当にできるのかな?

安心してたけるじいさん。

適正で安定したカロリーを当て続けてたら

ある程度美味しい焙煎豆は必ず出来るわ。

ここでもし出来なかったら「焙煎機にとっての適正な基準」

から逸脱しているかもしれない。

大抵はメーカー推奨で示されていると思うわ。

取説を見直すかメーカーに聞いてみるとわかるわよ。

Step1.中点を何℃にすればいいの?

中点を決めることで焙煎時間におおむね縛りがつきます。
中点とはコーヒー生豆を投入して一度下がりきった温度です。
中点を決めることにより、投入温度のアタリがつくようになると思います。
投入量によって変わるのでまずは毎回決まった量を投入するようにしましょう。
投入して中点が狙いまで中々落ち切らない場合は適正な投入量ではない可能性もあります。
投入量を増やすか、窯を冷やす工夫をすればいいでしょう。

半熱風式Discoveryの場合はまずは100℃以下を試すと基準にしやすいと思いますよ 🙂 

Step2.カロリーはどのくらい当てればいいの?

次にカロリーの設定についてです。
カロリー=熱量の事です。≒ガス圧
珈琲豆に熱が伝わる温度を設定します。
硬い豆、柔らかい豆、様々な状況によって変わってきます。
メーカーさんや師がいる場合は参考や推奨できるトータルタイムや火力が提示されている場合が多いです。頼もしいですね。試してみましょう。
ここは目指す焙煎時間に応じてアタリを付けてみてください。

半熱風式Discoveryの場合は0.8~1.0のガス圧を提案します。
これでメイラードフェーズの豆温度RoRが9~12℃当たりになると思います。

メイラード反応(メイラードはんのう、Maillard reaction)とは、還元糖とアミノ化合物(アミノ酸ペプチドおよびタンパク質)を加熱したときなどに見られる、褐色物質(メラノイジン)を生み出す反応のこと。※出展元:メイラード反応
ここでは焙煎豆が色づいてきた当たりと認識してください😌
Rate of Rise=上昇率。ここでは1分間で豆温度がどのくらいずつ上昇しているかを主に示していきます。

 

 

 

Step3.ダンパーはどのくらい開ければいいの?

水蒸気、排気、煙、チャフなどを外へ出すためのファン付きの弁だよ!
それによって排気の強さを変えれるんだ。
ドラムの回転速度で調節したり、そもそも無いものもあるよ。

まずはニュートラルを設定してください。
中点を迎え、窯内部の蓄熱を吸熱して行き、一度RoRが安定してくるあたり
(半熱風式Discoveryの場合は2分~3分当たりになるかな。)
で一度ダンパーがニュートラルになる位置を確認します。
ダンパーの開閉でホッパー(投入口)、またはテストスプーンの穴に手をかざしてみると空気が外へ排出、もしくは吸入されることが確認できると思います。
この位置を排出(正圧)も吸入(負圧)もしないポイントにダンパーを調節してください。
これで確認できることは窯内の状態が正圧か負圧かがわかります。
窯内部の温度上昇により焙煎の進行により段々と正圧寄りになりニュートラルがずれてくると思います。しかしここで人の手が加わり変動要因が増えると見失うのでまずはダンパーを動かさないことを推奨します。なので迷ったら若干負圧寄りにすると経験上失敗は少ないです。
ニュートラルを設定できない場合やダンパーの概念をある程度無視したい場合はドラム内が負圧寄りになっていることを認識してしっかり排気が行われる環境にして安定させてください。
※その際カロリー不足に陥りやすいのでしっかり強いカロリーを基準に当てれるようにしてください。

ダンパー以外から排気が行われるってことは窯内に熱膨張による圧力がかかっていることなんだ。
圧力によって水分が蒸発しにくくなり、その水分を介して豆の内側に熱が伝わりやすいよ。
吸入されるってことはダンパーの排気の力が大きく働き、熱気の対流が強く行われているってことなんだ。対流熱が強く働くということは、水分飛ぶよー!
ニュートラルはその両方の影響が少ない場所を指すよ。
基準にするにはちょうど良さそうだね 🙂 

これが設定できたらハゼまではその状態を続けてみて下さいね。

 

Step4.ハゼたらどうするの?

ハゼ=爆ぜ。かっこいいですね!!パチ!と音が鳴ります。
熱分解反応で発生した二酸化炭素により豆の内部の圧力が高まり、一気に放出されるときの音です。
そしてハゼが起きたらようやく火力を操作します。
なぜならハゼにより水分が一気に蒸発することで脆くなり、
カロリーが豆に与える影響が今までよりも一気に強くなるからです。

ハゼた後の時間は全体焙煎時間の20%を超えるようにしてみてください。
その20%のハゼ時間の間で2ハゼがこないくらいにはカロリーに落としてくださいね。
RoRは減少していくと思いますが上昇に転じない豆温度あたりを目安としてその間で調節するといいですよ☺

半熱風式Discoveryの場合はロースト時のカロリーから比較して少なくとも20%以上は落としてください。ずっと1.0カロリーで焼いていたとしたら0.8以下です。

これで出来上がり!!

Step5.クオリティチェック

こうして出来上がった珈琲に、焙煎で生じるオフフレーバーがあるかを確認します。
まず確認する点は
『Grassy』青臭さです。
ストレートに生焼けと考えていいです。
これは焙煎に対するカロリーが足りない場合に起きます。
これは豆の中心までカロリーが届いていない可能性があるので、
もっとカロリーを豆に伝える手段を取ります。
中点を下げてハゼまでのガス圧を上げてください。もしくはハゼまでの焙煎時間を延ばしてください。

そして『Baked Flavor』です。
フレーバー等の要素がもろもろすっぽ抜けた感じになってしまった焙煎です。
過剰に進み過ぎるとクラフト紙を噛んだようなアフターテイストも出てきます。
これは生豆の内面温度が表面温度を上回る現象が起きたり
窯内温度より豆温度が高くなってしまった場合などに起こります。
カロリーをガチャガチャいじったり、ハゼ前の火力が極端に強すぎたり、ダンパーが閉まり気味だったり妙に焙煎時間が長くない限り、ダンパーニュートラル&カロリー一定の環境下ではなかなか発生しない現象だと思います。

Step6.トライ&エラー

この焙煎の基準でその生豆の品質をある程度素直に表したパラメーターの珈琲が出来ます。
珈琲豆は化学変化で味わいが作られます。
生豆に含まれる一定の水分コントロール(ダンパー操作)と、化学変化を起こす火力(カロリー操作)のバランスが整えば美味しい珈琲は作られます。
ですが、ここできっとあなたは
 ・もっと甘さが出るはず
 ・もっとクリアですっきりした味わいに
 ・もっととろっとしたコクがほしい
 ・フルーティーな味わいが。
そんな気持ちが出てくると思います。

あぁ!本当にあなたは珈琲が好きですね!

ここからがあなただけの珈琲の終わりなき探求の始まりです。

 

これからお伝えしていくことは
まず基準の前提があってそこからパラメータを最適化していき、あなたの珈琲を作っていきます。スタート地点の物差しがあるということは焙煎を見失わないで理解していきやすいと思うので良かったらついてきてくれると嬉しいです。

僕がこの基準を通じてとにかく伝わってほしいことは水分と火力のバランスで焙煎豆は出来上がるということを忘れないでほしいということ。
色々な人のプロファイルを覗いていくと実に様々な操作をしていると思います。それにつられて過度なダンパーの操作や火力の操作を行わないでください。そうしなくても珈琲の焙煎は行われるということを見失わないでください。

これがあなたの芯にあるとあなたとあなたの焙煎機はより深く繋がれることだと思います。

この基準は生豆が変わればもちろん違っていきます。
新しい豆を扱う場合はこの基準をしっかり意識することが大事だと思います。
焙煎の本質はトライ&エラーです。

さぁ焙煎をはじめよう!