焙煎豆の内外温度差による味づくり

焙煎

夏!

思い出します。銀だこさんの灼熱の鉄板の前にいたこと。
思い出します。移動販売車の灼熱のクレープ焼き台の前にいたこと。
いつか思い出すのでしょうか。灼熱の焙煎機の前にいることを。

過去にすることなく現在進行形で向き合っていきたいものです。

通過した経験や年月は、年輪のように確かに内側に刻まれていきます。

そう、それは珈琲豆も一緒なんです。

(!?)

珈琲豆は熱が内部へ伝わりにくいです。

その為豆内部と外部に温度差が生じます。

外部は排出温度でわかりますが、
内部は過程で決まります。

前回や前々回は珈琲豆の内面を磨いたり、たくさんの経験をさせていくお話でした。

今回は今までの様々な要素を整えて最高傑作へと、狙ったディティールに仕上げるお話です!

最終回!頑張りましょうね!

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‐デベロップメントフェーズについて‐

デベロップメント(Development)=発展、発達。

ハゼた後排出するまでのあいだのことを言います。

出来上がった様々な成分を発展や発達させて美味しい味わいに整えてるよフェーズです。

あくまで整えです。

何もないところから美味しさが発生しているわけではなくて今ある美味しさの種を発展や発達させて整えていることを頭に入れておいてください。

※↓一回読み飛ばして2週目読んでください。↓


今回の内容と矛盾して頭に入りにくいと思うのでまずはここのボックスは読み飛ばしてください。
でも知っておいてほしい事。
デベロップメントは本当はデベロップメントフェーズ内でのみ行われている反応ではありません。
豆がある程度高温帯にさらされたら発生します。
重ねて何度も伝えることになるんですが、反応はあくまでグラデーションです。
ただ、指標としてわかりやすいので、ハゼからの時間を見るのです。
ハゼて劇的に豆の状態が変わることにより、影響をかなり受けやすくなるからなんです。


ハゼたからデベロップメントするわけじゃないことは押さえておきたいポイントです。
極浅煎りの排出を狙う場合はこの考え方は抑えておくと役に立ちます。
(強い温度をある程度早めに当てる環境下にした上でハゼ前のタイムを延ばしてハゼ後のフェーズを短くする等)

なぜメイラード反応の延長ではなく、なぜこのハゼ後からをデベロップメントフェーズの始まりとして分けて考えるでしょうか。

ハゼるからでしょう。わかりやすいじゃん。

そうです!でも詳しく掘り下げて理解してほしいわ!
ハゼの影響で『豆の状態と反応が劇的に変わるからですね。
そうなるとそれに合わせてカロリーやダンパーも劇的に調整したほうが良さそうということがわかります。
豆の足並みに合わせて焙煎機の操作をすることがメインです。

焙煎機の操作によって珈琲豆の生き死にを自由にしようとはおこがましいとは思わんかね…。

 

主に二酸化炭素で内圧が高まっていた環境が亀裂により放出されます。
それにより水分が放出され、吸熱をしていた豆がここより発熱を強めます。
豆がどんどん多孔質になり物理的に脆くもなり、熱によるダメージも受けやすくなります。
ビターが作られやすくなり、揮発性のあるアロマが強くなります。
アロマはストレッカー分解によるものなのですが、言葉は抑えなくていいです。
ポイントはまだ分解されていない様々な成分があったら、アロマに昇華できるてるよくらいに覚えておくといいかもしれません。
つまり、非常に熱の影響を受けやすい脆い状態になるということです。
なのでカロリーは下げるのが一般的です。
また、この状態ではメイラード反応にほとんど成分が使用できなくなっています。
つまりハゼ時にΔT中心温度がまだ未発達であった場合はフレーバーの欠乏が起こります。

 

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‐焙煎豆をΔT理論で考える‐

さんかくてぃー!

デルタティーと読むわよ。

Δ=2つの値の差

T=Temperature(温度)よ。

焙煎豆を整える肯定において役に立つ考え方の一つにΔT理論があります。

上でさおりお姉さんが言っているとおり

ΔT=2つの値の温度の差です。

その値は焙煎豆の内部と外部を指します。

ΔT=焙煎豆内部と外部の温度差
ってことなんですがいちいち言葉にすると長いので略称でΔTということなんですね。

焙煎豆の内部と内側は完全には一致しない。

ΔT理論は豆内部が完全な均一ではないからこそ様々な酸味や甘味、フレーバーをもたらしているという考え方です。

つまり表面温度と中心温度の温度差が珈琲に複雑さをもたらします。

これはハゼた後排出まで温度を上げず、むしろ下げるようなプロファイルでかつ長時間焼き、内外の温度差を埋めた(ΔTほぼゼロ)珈琲を一度飲んでみると重要性がわかります。

成分の発達がまだ見込める状態であればベイクドフレーバーが発生し、その状態をさらに超えていくと平たく、ローストフレーバーと苦味のみを感じる味わいになります。(ΔTの逆転)

ですが、ΔTが極端に大きければ大きいほどいいかというとそうとは限りません。

極端に大きいということは、
鋭い苦味と鋭い酸味を併せ持つということです。

重ねて言いますが、焙煎はグラデーションです。
そして発達していく成分には限界値もあります。

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焙煎豆温度≠味わいではあると重々承知はしていますが、
説明用でわかりやすくするために下記のマトリクス表を用意しました。

『焙煎豆温度と味わいの傾向表』

豆温度 185℃ 190℃ 195℃ 200℃ 205℃ 215℃ 225℃
優位に感じる味わい むしろ渋い ハイアシッド フルーティー フレーバー スイートネス アロマ&バランスド むしろビター
反応 キャラメライゼーション ハゼ 2ハゼ

※温度は温度計によって変わります。数字は参考にしないで一例としてみてください。

デベロップメントフェーズにおいての温度推移による味わいの影響を上記で仮定した上で
2つの焙煎例をもとに理解を深めてみましょう。

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例① 生焼けっぽくておいしくなかった例

デベロップメント1分間後排出
RoRは均等上昇
豆温度205℃
まだハゼている豆がある場合の状況で排出した場合。

 

ΔT 豆中心部 →ΔT→ 豆表面部    
味わい 185℃
むしろ渋い
190℃
ハイアシッド
195℃
フルーティー
200℃
フレーバー
205℃
スイートネス
215℃
アロマ&バランスド
225℃
むしろビター
RoR予想割合 30% 25% 20% 15% 10%    

RoR予想割合=カロリーを与えている以上時間経過で必ず焙煎が進行していくんですが、その過程で、温度帯にどのくらい滞在したかで割合(%)を予想しています。

ビターさはほぼ感じないが渋い味わい。
もうデベロップメントフェーズにもう少し時間をかけて焙煎を進行させる必要を感じた。

 

例② 酸味まろやか甘さを感じる浅煎り

デベロップメント2分間後
RoRは排出前なだらか減少
200℃以上の滞在時間が長い。
豆温度215℃
全てハゼきった場合の状況で排出。

 

ΔT     豆中心部 豆表面部  
味わい 185℃
むしろ渋い
190℃
ハイアシッド
195℃
フルーティー
200℃
フレーバー
205℃
スイートネス
215℃
アロマ&バランスド
225℃
むしろビター
RoR予想割合     15% 30% 40% 15%   

排出温度を215℃で抑え、ビター感も抑えた焙煎。
しっかりデベロップメントフェーズの時間をかけ、中心温度を上げるように努めた。

 

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焙煎豆の内外温度差による状態の把握と香味が変わることについての理解できたでしょうか?

続きましてそれをさらにグラフ化し、一発で確認できるようにしておきました。

このグラフを参考に好みの味わいへ整えるヒントにしてください。

※注 デベロップメントタイムは全体焙煎時間との相対性に変わります。
今回僕準拠のタイムで書いていますが、実際は総焙煎時間から見た割合等を尺度としてくださいね。

 


ΔT上限 高
ΔT下限 低

排出温度215℃=表面温度高
デベロップメントタイム1分30秒=内面温度低
かなりメリハリの効いた味わい。
やりすぎると苦酸っぱい。


ΔT上限 高
ΔT下限 高

排出温度215℃=表面温度高
デベロップメントタイム2分30秒=内面温度高
焙煎が進行して酸味は穏やかで甘い。
フラットな印象にならないように注意。


ΔT上限 低
ΔT下限 低

排出温度205℃=表面温度低
デベロップメントタイム1分30秒=内面温度低
甘さにかけるがとてもフルーティ。
最低限の内面温度の為に高い熱効率が必要。


ΔT上限 低
ΔT下限 高

排出温度205℃=表面温度低
デベロップメントタイム2分30秒=内面温度高
酸味は穏やかだが苦くもない。
メリハリはないがバランスはとりやすい。

 

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‐デベロップメントフェーズから見た焙煎の全容‐

焙煎は豆に熱を加えて温度を上昇させていき熱反応を起こしていきます。

外側から熱を加えているわけなので次第に内側に吸熱していきます。(当たり前ですね。

つまり最初っから外側と内側には確実に、しかも大きく温度差が産まれています。
(スタート地点なんて生豆が室温(25℃)なんですからね!)

豆温度上昇のメカニズムは焙煎機によって違うのですが、
与えているカロリー(窯内温度だったりバーナー直接だったり熱風温度だったり)
と豆温度の差分が大きければ大きいほど熱効率は高く、大きく開くということです。

分かりやすく言えばRoRの角度が強ければΔTは大きく産まれる傾向になります。

短時間焙煎や強いカロリーを与えることがフレーバー強くなるとか、メリハリきくとか、ΔTを意識すれば今までの経験で腑に落ちることが多くありませんか?

これは総焙煎時間(及び中点)の策定のヒントになります。

RoRについては前記事にて解説していますので読んでみてください。

そしてその中でもデベロップメントフェーズというのはその必然的に生まれた内外のΔT差分を丁度いいバランスに整えることなわけです

終わり良ければ総て良し。

とっても役に立ちそうな情報をありがとう!

君の珈琲豆、買うよ!(そのうち)

要点はさらっと拾えるようにしたんだけど、

さらっと大事なことを言っていたり、焙煎に慣れてきてもう一度読んだら感じ方が変わったり、いろんな角度で見えるようなヒントも散らしたわ。

真意を隠してフェイクな書き方もあるかもしれない。

間をおいて振り返ったりしたり、ある時にもふと思い出して読み深めていってくれたらうれしいわ。

ありがとう。

これでわたしも最強焙煎士の一角になったわ。

もう貴様に用はない!ふはは!

これで最強になるなら世の中最強だらけよ。

きっとそのうち日本でも少し浅めの焙煎度合いに合わせた実用書もでてくるわ。(早く出てきてよ)
いろんな考え方もあるし、いろんな答えもある。

知識はスタートラインとヒントでしかなくて本当に大事なことは経験とスキルです。

真似や模倣でも身につけれられたら困るという考えの人は自分が模倣で身につけれられることしかできないと認めているいうこと。

だからみんなで仲良く情報を共有してやっていきましょう。

美味しい珈琲を作りたいって思いは共有しているじゃない。

『もっと』理論的に深く、『もっと』実用的に早く、『もっと』具体的に身につけたい方は、焙煎のセミナー行くことをお勧めするわ。

そのためのセミナーよ。紹介するわ。

先生に質問する前にまず一度自分で調べるように、その最初の一歩になれたなら幸いです。

やれるならやってみて。そしてやれたならもっとやれることを今度は教えてね。一緒に頑張りましょう!

あなたの珈琲がどんどん美味しくなることの一助となることを祈ってるわ。

ここまで読んでくれて本当にありがとう。

正直よくわからなかったけどわかるところと納得いくところだけ

僕のプロファイルに反映させてみてやってもいいよ。

それって焙煎が楽しいってことだよね!!

次回はラテアート編でお会いしましょう!

またね!